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将棋の駒の世界 ── 1,000円の駒と、100万円の駒は何が違うのか

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最初に結論:買うなら、まずプラスチックの駒です

将棋を始めたばかりの方が最初に買う駒は、プラスチック駒で構いません。 1,500円前後で買えます。

理由は3つあります。

  • 強い。 落としても欠けません。飲み物をこぼしても拭けば済みます。
  • 読みやすい。 文字がくっきりしていて、盤の上で迷いません。
  • 将棋大会でも使われている。 安物だから大会では使えない、ということはありません。

日本将棋連盟のオンラインストアでも、プラスチック駒(上製)が1,430円、一字駒「創」が2,090円で売られています。木製のスタンプ駒でも2,750円です。最初の一組としては、この価格帯でまったく問題ありません。

折りたたみ式の盤とセットになった安価なものは、あまりおすすめしません。 折り目のところで駒が傾いて、指しているうちに気になってきます。プラスチック製の巻ける盤(マグネットではないもの)のほうが、同じ値段でも快適です。

ここまでが実用の話です。ここから先は、将棋の駒がどこまで行けるのかという話をします。買わなくても、知っておくと将棋の見え方が変わります。

駒には5つの段階がある

将棋の駒は、文字の入れ方によってはっきり格が分かれます。安い順に5段階です。

種類文字の入れ方価格の目安
押し駒(スタンプ駒)ハンコのように押す数千円
書き駒漆で直接書く1万円前後〜
彫り駒印刀で彫り、漆を入れる数万円〜
彫り埋め駒彫った溝を漆で埋め、表面を平らに磨く十数万円〜
盛り上げ駒彫り埋めた上に、さらに漆を盛り上げて書く数十万円〜

※価格は本記事の調査時点の目安です。材や作者によって大きく変わります。

日本将棋連盟のストアで売られている彫り駒は、4万6,000円前後。ここが「趣味として一生使う駒」の入口です。

そして最高級が盛り上げ駒。文字が盤の上に浮き上がって見えます。指で触ると、文字の部分がわずかに盛り上がっているのが分かります。タイトル戦で使われるのは、ほぼこれです。

段階が上がるほど値段が跳ね上がるのは、工程が増えるからです。 彫り埋め駒は、彫って、漆を埋めて、磨いて、また埋めて、また磨いて、を何度も繰り返します。漆は湿度で乾かすので、乾燥に時間がかかり、環境次第では予定どおりに仕上がりません。盛り上げ駒はその上にさらに一工程が乗ります。

材の話:黄楊(つげ)という木

高級な駒はすべて黄楊(つげ)という木で作られます。

黄楊は成長が非常に遅い木です。そのぶん木目が緻密で、堅く、使い込むほど飴色に変わっていきます。駒は40枚1組。その40枚の木目を揃えるとなると、同じ木から取るしかありません。 これが値段を押し上げる最大の理由です。

産地で大きく2種類に分かれます。

御蔵島つげ(島つげ)
伊豆諸島の御蔵島産。面積わずか20平方キロほどの島でしか採れません。天候が悪いと数か月間、船が出せず運び出せない。この希少さから、駒の材としては最高級とされています。色は黄色から白っぽく、木目が細かい。江戸時代の名工が好んで使ったという歴史もあります。やや軟らかく、傷がつきやすいのが弱点です。

薩摩つげ
鹿児島県西部産。御蔵島より産地が広いぶん、手に入りやすい。赤みがあり木目はやや粗いのですが、堅くて粘り強く、実用では薩摩のほうが向いているという評価もあります。密度が高く、使い込むと艶が出ます。

「御蔵島のほうが上」と一律に言い切れないのが面白いところで、観賞なら御蔵島、実戦なら薩摩という選び方をする人もいます。

さらに、木目に特別な模様が出たものには名前がついています。虎の毛のような縞が出た虎斑(とらふ)、孔雀の羽のような模様の孔雀杢(くじゃくもく)。こうした駒は、同じ作者の同じ彫りでも値段が跳ね上がります。

書体の話:同じ「歩」でも形が違う

駒の文字には書体があります。四大書体と呼ばれるのが、錦旗(きんき)・水無瀬(みなせ)・源兵衛清安(げんべえきよやす)・巻菱湖(まきりょうこ)の4つです。

  • 水無瀬 — もっとも歴史が古い書体。安土桃山時代の水無瀬兼成が書いたものが元になっています。
  • 錦旗 — 定番中の定番。落ち着いた楷書で、どんな盤にも合います。迷ったらこれ、と言われる書体です。
  • 源兵衛清安 — 文字が太く、力強い。
  • 巻菱湖 — 江戸時代の書家・巻菱湖の字。四大書体のなかでは一番読みやすいという評判で、初心者にも人気があります。

ほかにも長禄、董斎、金龍、宗歩好など多数あり、高級な駒ほど書体の選択肢が増えます。

プラスチック駒にも書体名がついていることがありますが、こちらは見た目の違いが小さいので、そこまで気にしなくて構いません。

天童市 ── 駒の9割を作る町

将棋駒の話をすると、必ず山形県天童市が出てきます。

全国の将棋駒の9割以上が天童で作られています。

きっかけは江戸時代後期。1831年に織田藩が天童に城を移したとき、藩の財政は苦しく、下級藩士の生活も苦しかった。そこで藩の用人だった吉田大八が、家臣の内職として駒作りを奨励しました。

なぜ駒だったのか。「将棋は兵法に通じるから、武士が作っても恥にならない」という理屈だったと伝えられています。内職を恥じる武士のプライドを立てるための理由づけだったわけですが、この一手が200年後の地場産業になりました。

天童将棋駒は現在、経済産業大臣指定の伝統的工芸品です。天童駅には全国唯一の将棋専門資料館が併設されています。2018年には同時対局数の世界記録(2,362局)も達成しています。

将棋を続けるなら、一度は行ってみる価値のある町です。

ふるさと納税という入口

いい駒がほしい。でも数万円をいきなり出すのは踏ん切りがつかない。

そういうときの選択肢がふるさと納税です。天童市は将棋駒を返礼品にしています。上彫の駒から、伝統工芸士が作る盛り上げの根付駒まで幅があります。

ふるさと納税は寄付なので、支払った額がそのまま安くなるわけではありません。 自己負担2,000円を除いた分が、翌年の住民税や所得税から控除される仕組みです。控除には年収などに応じた上限があるので、自分の上限額を先に確認してから申し込んでください。上限を超えた分はただの寄付になります。

そのうえで言えば、もともと払う税金の行き先を天童市に変えて、駒を受け取るという形になります。駒を買うつもりがなかった人でも、検討する価値はあると思います。

返礼品の内容と寄付金額は変わります。申し込む前に、天童市のふるさと納税ページで最新の情報を確認してください。

まとめ

  • 最初の一組はプラスチック駒で十分。 1,500円前後。大会でも使われています。
  • 駒は押し・書き・彫り・彫り埋め・盛り上げの5段階。値段は数千円から数十万円まで。
  • 高級駒の材は黄楊。御蔵島つげと薩摩つげがあり、どちらが上とは一概に言えません。
  • 書体は錦旗・水無瀬・源兵衛清安・巻菱湖が四大書体。読みやすさなら菱湖。
  • 駒の9割は山形県天童市製。始まりは江戸時代の武士の内職でした。
  • ふるさと納税で天童の駒を返礼品として受け取れます。上限額の確認を忘れずに。

参考